失業保険は離職した人が再就職するまでの生活を支援する大切な制度です。
失業保険の手続きは難しそうに感じるかもしれませんが、必要な書類をそろえてハローワークに行けば、その日のうちに申請を終えられます。
この記事では失業保険の手続き方法から受給条件、注意点まで、転職活動をスムーズに進めるための情報をすべて解説します。
この記事でわかること
- 失業保険を受け取るために必要な条件と、対象になる人の基準
- 申請時にそろえるべき書類と、マイナンバーや離職票に関する注意点
- ハローワークでの手続きの流れと、初めてでも迷わない進め方
- 受給額や期間の目安、申請後によくある不安への解決策
失業保険を受け取るために最初に知っておくべきこと
失業保険を受け取るために、まず制度の基本的な仕組みと受給条件を正しく理解しましょう。
ここでは、失業保険受給にあたって勘違いしやすいポイントも含めて詳しく説明します。
失業保険と雇用保険・基本手当の違い
失業保険は日常的に使われる呼び方ですが、正式名称は「雇用保険の基本手当」です。
つまり、雇用保険は制度全体を指し、その中の給付の1つが基本手当(失業保険)になります。
雇用保険と失業保険(基本手当)の違い
- 雇用保険:働く人を支える制度全体(育児休業給付金・介護休業給付金・教育訓練給付金などを含む)
- 基本手当(失業保険):離職中の生活を補うための給付
- 保険料:労働者と事業主が折半し、給与から天引きされる仕組み

区別して理解しておくことで、必要な給付を正しく活用できます。
「失業している」状態の定義
失業保険を受給するには、法律で定められた「失業の状態」に該当している必要があります。
以下の3つの条件をすべて満たしていなければ、雇用保険に加入していても失業保険は受給できません。
失業状態の3条件
- 就職の意思があり、求人応募や面接に参加していること
- 健康や家庭の事情により、すぐに働ける状態であること
- 積極的に求職活動を続けているが、内定が決まっていないこと
受給対象外となるケース
- 就職の意思がない、または求職活動をしていない場合
- 病気やケガで当面就労できない場合
- 妊娠・出産・育児で当面働けない場合
- 学業や家事に専念している場合
- すでに内定が決まっている場合
失業保険を早くもらえる「特定理由離職」とは
特定理由離職者とは、やむを得ない理由により自己都合で離職した人を指します。
通常の自己都合退職では3か月間の給付制限期間がありますが、特定理由離職者に該当すれば給付制限期間がなくなります。
特定理由離職者に該当するケース
ケース | 具体例 |
---|---|
病気・けが |
・障害で業務困難 ・病気や負傷で就労不可 |
妊娠・育児 | ・妊娠/出産で勤務困難 ・保育所に入れず両立不可 |
介護・家庭事情 | ・親族の介護で転職必須 ・配偶者の転勤で転居 ・家庭事情で勤務継続不可 |
家族と別居困難 | ・単身赴任で別居不可 ・結婚で転居 |
契約更新不可 | ・契約社員 ・派遣更新が認められない |
該当する可能性がある場合は、証明書類を持参してハローワークで相談してください。
必要書類
- 医師の診断書
- 母子手帳
- 介護認定書
- 結婚証明書

失業保険の申請に必要な書類と準備チェックリスト
失業保険の申請には複数の書類が必要です。
事前に準備しておけば手続きがスムーズに進みます。
ここでは、失業保険の申請に必要な書類を詳しく説明します。
失業保険の申請に必要な書類と準備チェックリスト
提出が必要な書類一覧と取得方法
失業保険を申請するには、必要書類をそろえて提出しなければなりません。
必要な書類を以下の表にまとめました。
書類 | 内容 | 取得先 | 注意点 |
---|---|---|---|
離職票-1・2 | 離職票-1:番号・離職日 離職票-2:離職理由・賃金6か月分 |
前職の会社 | 退職後10日以内に郵送 2週間届かない場合は会社→ハローワーク |
雇用保険被保険者証 | 雇用保険加入証明 | 前職の会社 | 紛失時はハローワークで再発行 (時間がかかる) |
本人確認書類 | 運転免許証 マイナンバーカード パスポートなど |
各交付機関 | 写真なし証明書の場合は 健康保険証+住民票など2点必要 |
証明写真2枚 | 縦3.0×横2.5cm、3か月以内 | 写真機・写真館 | スピード写真可 古い写真は不可 |
印鑑 | 書類押印用 | 個人準備 | 認印可 シャチハタ不可 |
預金通帳 | 失業保険振込口座確認 | 各金融機関 | 本人名義に限る ゆうちょ・ネット銀行も可 |
出典:厚生労働省

離職票は退職後10日以内に会社が発行し、通常2週間程度で自宅に届きます。
雇用保険被保険者証は入社時に交付されているはずですが、紛失している場合は会社に依頼するか、ハローワークで再発行手続きが必要です。
離職票が届かない・会社が対応しないときの対処法
離職票が届かないと失業保険の申請が遅れ、給付開始も後ろ倒しになります。
状況に応じて、次の手順で対応しましょう。
状況 | 対応方法 |
---|---|
退職後10日以上経過しても届かない | 会社に連絡し、発送予定日を確認 |
会社が発行を拒否 / 連絡不可 | ハローワークへ相談し、発行指導を依頼 ※会社名・担当者・やり取り日時を記録 |
退職後12日以上経過しても届かない | 必要書類を持参し、ハローワークで仮手続き |
仮手続きに必要な書類
- 退職証明書
- 源泉徴収票
- 健康保険資格喪失証明書

対応の流れを把握しておけば、給付開始が遅れるリスクを避けられます。
特に会社と連絡が取れない場合は、やり取りを記録しておくとハローワークでの手続きがスムーズです。
初めてでも安心!失業保険の手続きの流れを解説
失業保険の手続きは4つのステップに分かれています。
ここでは、初回手続きから受給開始までの流れを、必要書類や注意点もあわせて紹介します。
失業保険の手続きの流れ
STEP1|ハローワークで求職申込みと受給資格の決定
失業保険の申請は住所地を管轄するハローワークでのみ可能です。
申込書の記入や面談、離職票の提出などを通じて資格が判定されます。
以下の流れで進めましょう。
ハローワークの窓口に行く
営業時間:平日8時30分〜17時15分
求職申込みをする
総合受付で「失業保険の申請をしたい」と伝え、求職申込書を受け取る求職申込書で記入する内容
- 希望職種・勤務地・勤務時間
- 希望給与
- 退職理由・職歴
職員と面談をする
希望条件や就職意欲を確認される
転職相談や今後の活動の流れについて説明を受ける離職票など必要書類を提出する
離職票-1・2など必要書類を提出する
職員が内容を確認し、受給資格を判定する注意点
- 会社都合退職: 待期7日後に支給開始
- 自己都合退職: 待期7日+1か月の給付制限
受給資格決定通知書を受け取る
書類に問題がなければ「受給資格決定通知書」が交付される通知書に記載されている内容
- 受給資格決定日
- 基本手当日額(1日あたりの給付額)
- 受給可能期間
あわせて「認定日」「雇用保険説明会の日程」も案内してもらえる

基本手当日額とは「1日あたりに支給される額」で、退職前6か月の給与から算出されます。
おおよその受給額は「日額×30日」でイメージできます。
STEP2|雇用保険説明会への参加
受給資格決定から7日後に雇用保険説明会が開催されます。
雇用保険説明会説明会では失業保険の詳しい説明があるので、必ず参加しましょう。
所要時間は約2時間です。
説明会で受け取る書類
- 失業認定申告書(4週間ごとに提出が必要)
- 求職活動記録用紙(実績を記録する用紙)

個別対応を受けられる場合があります。
STEP3|認定日前の求職活動と活動記録の準備
初回の雇用保険説明会のあと、最初の認定日までの約3週間に求職活動をおこない、活動記録を残す必要があります。
必要な求職活動実績
- 初回認定日(1回目):1回以上
- 2回目以降の認定日:求職活動実績2回以上
認められる求職活動
- 求人への応募
- 面接や筆記試験の受験
- ハローワークでの職業相談
- 職業安定所等が実施する各種講習・セミナーの受講
- 許可・届出のある転職エージェントが実施する職業相談
- 企業説明会、面接会、企業見学の参加
記録するもの
- 活動日
- 活動内容(応募・面接・相談など)
- 応募先企業名または相談先機関名
- 活動の結果
求職活動の内容は、認定日に「失業認定申告書」で申告する必要があるため、日付や内容を正確に記録しておくのが重要です。
STEP4|失業認定日に書類提出し、受給が開始される
失業認定日は、ハローワークで失業状態を確認してもらう重要な日です。
認定を受けると失業保険が振り込まれます。
認定日に提出する書類
- 雇用保険受給資格者証
- 失業認定申告書(求職活動実績を記入済みのもの)
- 求職活動の証明書類(応募先の控え、面接通知、セミナー受講証明など)
失業認定申告書の記入内容
- 認定期間中の求職活動実績
- 働いた日数と収入(アルバイト等)
- 内定の有無

必ず正確に記入しましょう。
失業保険の受給額と支給期間をわかりやすく解説
失業保険は、「どのくらいの期間」「どれくらいの金額」がもらえるか気になる人もいるのではないでしょうか。
ここでは、受給額と支給期間の決まり方を具体例を交えて詳しく説明します。
失業保険の受給額と支給期間
基本手当日額の計算方法と収入別シミュレーション
失業保険の受給額は「基本手当日額」で計算されます。
まずは計算方法を押さえ、その後に年収別のシミュレーションを見てみましょう。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
※賃金日額 = 離職前6か月間の賃金合計 ÷ 180日
給付率は年齢と賃金日額に応じて45%〜80%の範囲です。
給付率の目安(60歳未満の場合)
- 賃金日額 2,577円〜4,970円未満 → 80%
- 賃金日額 4,970円〜12,340円未満 → 80%〜50%(逓減方式)
- 賃金日額 12,340円〜13,890円以下 → 50%
- 賃金日額 13,890円超 → 45%
※逓減方式(ていげんほうしき)とは、低賃金の人ほど高い給付率が適用され、生活を手厚く保障する仕組みのことです。
年収別シミュレーション
年収(月収) | 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 | 月額換算 |
---|---|---|---|---|
年収300万円 (月収25万円) |
8,333円 | 約60% | 約5,000円 | 約15万円 |
年収400万円 (月収33.3万円) |
11,100円 | 約55% | 約6,100円 | 約18.3万円 |
年収500万円 (月収41.7万円) |
13,900円 | 約45% | 約6,300円 | 約18.9万円 |

自分の収入に当てはめて、受給額をイメージしておきましょう。
受給期間は「年齢×勤続年数×退職理由」で決まる
失業保険の受給期間は、年齢、雇用保険加入期間、離職理由の3要素で決まります。
年齢が高く、加入期間が長いほど受給日数は増える仕組みです。
自己都合退職の場合
雇用保険加入期間 | 受給日数 |
---|---|
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
会社都合退職/特定受給資格者/特定理由離職者の場合
年齢区分 | 雇用保険加入期間 | 受給日数 |
---|---|---|
30歳未満 | 1年以上 | 90〜240日 |
45〜60歳未満 | 1年以上 | 90〜330日 |
60〜65歳未満 | 1年以上 | 150〜330日 |

そのため、待機期間終了後すぐに給付を受けられ、早期に生活を安定させられます。
失業認定と求職活動実績の作り方とポイント
失業保険を継続して受給するためには約4週間に1回の失業認定が必要です。
ここでは、認定のルールと効率的な求職活動実績の作り方を詳しく説明します。
失業認定と求職活動実績の作り方とポイント
失業認定の4週間ごとの流れを解説
失業認定は、失業保険を継続的に受け取るために欠かせない手続きです。
認定されると4週間分の基本手当が支給されるため、スケジュールを確実に押さえておく必要があります。
認定日までのスケジュール
項目 | 内容 |
---|---|
初回認定日 | 雇用保険説明会から約3週間後 |
2回目以降 | 前回の認定日から28日後 |
調整 | 土日祝と重なる場合は前後に変更される |
当日の手続きの流れ
- 指定時間にハローワークに行く
- 雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を提出
- 職員との面談(求職活動内容の確認など)
- 次回認定日の案内
- 書類の返却
認定日に欠席した場合
- 認定日にハローワークに行かないと、その期間の基本手当は支給されない
- 病気・ケガ・親族の危篤・交通事故など正当な理由があれば、証明書を提出して後日認定が可能

失業認定日は失業保険の支給を左右する重要な日です。
欠席や準備不足があると給付に影響するため、必ずスケジュールを守りましょう。
認定される求職活動とは|OK・NG事例
求職活動が実績としてカウントされるためには「実際に応募・面接・相談・参加といった行動を取っていること」「就職につながる具体的な活動であること」が必須条件です。
求職活動のOK・NG事例
区分 | 認められる活動(OK) | 認められない活動(NG) |
---|---|---|
求人応募 | ・インターネット応募 ・企業へ直接応募 ・ハローワーク経由応募 ・転職エージェント経由応募 |
・求人サイトを見ただけ ・求人の検索をしただけ ・新聞の求人広告を見ただけ |
面接・試験 | ・筆記試験の受験 ・面接の受験 ・適性検査の受験 |
・履歴書を書いただけ ・面接準備をしただけ |
職業相談 | ・ハローワークで相談 ・転職エージェントで相談 ・就職支援セミナーで個別相談 |
・家族に相談しただけ ・友人に求人を聞いただけ |
説明会・ セミナー |
・企業説明会への参加 ・合同面接会への参加 ・就職関連セミナーの受講 ・インターンシップ参加 |
・企業のホームページを見ただけ ・業界研究をしただけ ・転職関連の本を読んだだけ |

求人を調べただけや、面接の準備をしただけでは対象外です。
実績に含まれるか判断が難しい活動は、事前にハローワークに確認しておくと安心です。
オンラインセミナー・転職エージェントの活用法
失業保険を受け取るには、認定日までに求職活動実績を積む必要があります。
以下に求職活動実績になるものを整理しました。
方法 | 実績になる行動 | ポイント |
---|---|---|
オンラインセミナー | ・業界研究セミナー ・履歴書作成セミナー ・面接対策セミナー ・企業説明会 (オンライン開催) |
参加証明書を必ず保管する |
転職エージェント | ・初回面談 ・キャリアカウンセリング ・定期的な相談 ・求人紹介 |
複数登録すると、 実績を効率的に作れる |

初回面談に参加して、さらにセミナーを受ければ、それだけで求職活動実績を2回分にできます。
効率よく実績を積みたい人には特におすすめです。
失業保険に関するよくある質問
ここでは、失業保険申請に関するよくある質問に回答します。
離職票が届かないときはどうすればいいですか?
まず前職の会社に確認し、2週間経っても届かない場合はハローワークに相談してください。
退職証明書や源泉徴収票などで仮手続きも可能です。
パートをしながらでももらえますか?
1日4時間未満かつ週20時間未満なら受給できます。
収入は必ず申告し、基本手当日額の80%を超えるとその日は支給されません。
自己都合退職でも会社都合扱いにできますか?
ハラスメントや賃金大幅減額など一定条件を満たせば「特定受給資格者」として会社都合と同様に扱われます。
証拠書類を持参してハローワークに相談してください。
扶養内で失業保険を受け取れますか?
年間受給額が130万円未満なら扶養内で受給できます。
ただし基本手当日額が3,612円以上の場合は扶養から外れます。
認定日を忘れた場合はどうしたらいいですか?
当日中ならハローワークに連絡すれば対応可能な場合があります。
翌日以降はその期間分は不支給ですが、病気や事故など正当な理由があれば証明書を提出すれば認定されます。
手続きを迷わず進めて確実に失業保険を受給しよう
失業保険は、再就職までの生活を支える大切な制度です。
この記事を読んで、手続きの流れや必要書類、求職活動のルールを理解しておけば、安心して転職活動を進められます。
ポイント
- 離職票・雇用保険被保険者証は早めに準備する
- 雇用保険説明会は必ず参加する
- 認定期間内に必要な回数の求職活動を行い、記録する
- 失業認定日にハローワークへ必ず行く
「申請が難しそう」と迷う前に、まずは一歩行動してみてください。
失業保険を受け取りながら転職活動を進めれば、安心して次の仕事を探せますよ。